感謝と創造

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たにたやを始めて、2年が終わりました。この2年間無我夢中で走ってきましたが、振りかえってみるとこれまで自分が出会わなかった現象ばかりを目の当たりにしてきたような気がしています。特に2年めのメインとなった2016年。自分自身も人生の中で大きな学びとなったことが多くありました。
たにたやとして、そして私自身のことともリンクさせて書き留めておこうと思います。

店を始めて1年が過ぎ、日々の流れのなかで自分なりに決めたルールもゆるく更新していこうかと思った2年め。悩みのたねだったのは「土曜日」
土曜日は、お店を普通に開けていて、一番動きが極端な日でした。一気に予約をもらって賑やかな日と、本当に静な日と。。
私は、会社勤めをしていたときから、ただジッとしていることが苦手な性分でしたから、なにか生み出したい、なにか作り出したいと思っていて、この「土曜日」を、2名以上予約があったときにのみ営業とし、そうでないときは思い切って休店とし、自分自身がいろんなことを生み出すために考える日にしようと決めました。この告知をしたのが1月。
そういえば、会社員時代の後半に、自分で企画して2年ほど続けることができたトーク&交流会があったことを思い出しました。これは、様々な分野で活躍している人を招待して、数十人の会社の顧客となる人たちを観客としたトークイベント。よくある、ゲストがスライドなどをつかって自分の活動を聴衆にむけて話す典型的なトークイベントのスタイル。最後にそのゲストを囲んでの懇親会もやっていましたが、気になっていたのが 「ゲストと聴衆は、1対1にはけっしてならない」と。どんな会場、どんなシチュエーションでも1対何十人の一方的なイベントでは、最後まで一方通行なもので終わります(と私は思っています)
名刺を交換しても、ゲスト側の印象にはほぼ、交換した人々のことは薄っすらか、または全く残らない。交換してもらった側は1対1の気分にはなってその後
「自分はあの人を知っている」という気持ちになるものの、実質は1方向のままだと私は思っています。それ以来、いつかまた人が関わるもっと密度のある対等な会をできたらとずっと心の中にありました。

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この8席のたにたやで、スライドも使わない、もちろんマイクもない、ゲストと参加する人たちが対等に印象に残る会が出来るのではないかと思った2月〜3月のころ。私の出処として、照明の仕事があり、そして食の場を持つことができているわけで、「光」と「食」は、異質なものでありながら双方があることでそれぞれがさらに引き立つものであると確信していましたから、人もそうじゃないかなと思ったわけです。それで始めたのが、LIGHT AND DISHES です。これまでなんとなく静な動きだった土曜日を価値のあるものにしたいと試みたイベントです。最初の第一回目は4月。たにたやで扱っている日本酒、桂泉 特別純米酒こんこんの蔵元、はさまや酒造の、かの香織さんを呼んでの新酒の会からスタートしました。その後、様々な異分野の人たちを呼んで、8席だからできることとして、ゲストと参加のみなさんがお互いの顔を見て話せる密度の濃い会となっていったのです。

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この光と食と人の会、LIGHT AND DISHES のおかげで、成長できたことのひとつに店のメニュー。毎回ゲストの好きなものを作りますから、これまで自分がやったことのない料理もいくつか生まれました。
7月にいらしたゲストのひとり、元アマン東京のチーフコンシェルジュのオザキカレンさん。(イベント時は、アマン東京に勤務されてましたが現在は退職されてフリーランスで活動をスタートされています) 食通のカレンさんからは、バジル餃子と、たにたや的な最中。最中の皮のなかに、お酒のつまみになるようなものを。そして特にバジル餃子は好評で、その後夏の間はずっとバジル餃子をメニューイン。来年も夏にはバジル餃子やっていこうと思っています。
もちろん、ゲストと参加者も密度の濃い交流が実現。その後お仕事につながったり、個々に交流が続いていることをお聞きしています。SNSで繋がるのはもちろん、これが一方通行ではない本当の交流なのだと思いました。

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8月のお盆は、たにたやのある深川にとって特別なシーズン。来年2017年の大祭を前に今年は子供神輿がありました。毎年、このときは必ず、前にこの場所で営んでいた、串焼きこぬたの女将さん、古怒田明子さんと一緒に深川一丁目を盛り上げます。とにかく、今ここで、たにたやがやっているのもこの地深川と串焼きこぬたのご縁あってこそ。続けていけることが可能ならば、ずっと一緒に夏の富岡八幡宮の例大祭のときの営業をやっていこうと思っています。ふだん、なかなか来れない深川一丁目の方々もみんな来てくれるこのときを大切にしていきたいと心から思っています。このときばかりは、日曜も営業です。しかも昼間から2回転、そしてビールも半額 !! もちろん来年もですよ。

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たにたやの開店記念日は、11月7日。
会社員時代は仕事柄、デザイン関係の方々との縁が多く、店をオープンする際もそのときにお世話になった人たちに助けられています。みなさんに好評の内装インテリアだったりお店のショップカードだったり食器など。開店1年目のときに思ったのは、そんな自分のこれまでの経緯や経験を生かすかたちで周年をやったほうが良いのかもとということ。それ以前に、きっかけはボルドーワインのOrmialeとの出会いでした。
開店当初から、時々顔を覗かせてくれる、デザイナーのジャスパー・モリソンさん。
彼が門前仲町に東京のスタジオを持っていて、ワイナリーの共同経営者ということを知ります。そもそも、私がここで店をやっていなければ、ジャスパーさんとも会うことはなかったでしょう。彼らのつくるワインOrmialeは、ワインの王道、ボルドーで丁寧に作られているワイン。それは、デザインプロダクトをつくるのと同じ志であるものの、それ以上に難しいものづくり(とジャスパーさんは言っていました)。作られる本数も少なく、ボルドーの平均以下の酸化防止剤の量で限りなくビオのワイン。
そのワイナリーの創始者でジャスパーさんの長い友人のファブリス・ドメルクさんとやりとりを始めて、1周年は、私自身ストックしていたお金を全部つぎ込み
ワインを仕入れました。それは、デザインのことを知る自分こそがこのワインを店で初めてリリースすることがミッションだと思ったから。我ながら、よく決断したとおもいます・・(笑) 1周年は、ジャスパーさんがデザインしたイタリアの照明ブランドflos
さんの商品、GLO-BALLを店内にレイアウト。日本法人である日本フロスさんからその後寄贈され、いまでも店内にはGLO-BALLが灯っています。このとき、Ormialeとジャスパーさんのデザインしたものをコーディネートしてこれからの周年を祝おうと計画します。その2年目の周年は、開店からたにたや店内の一部となっている、ジャスパーさんデザインのカウンターチェア Lightwoodチェア。

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このチェアのメーカー、マルニ木工さんの2016年に発表され発売している T&Oチェア。このシリーズから
T2バースツールMidを1脚借りることに。最終的にはこの1脚がマルニ木工さんから寄贈されることになりました。ここから、たにたやは8席から9席になるのです。それから、今年からは去年自力で仕入れたワインも、素晴らしいボルドーワインのインポーターさんの(株)アストルさんに輸入してもらうことになり、今年の周年期間の11/2にはOrmiale2012のメーカーズディナーを開催することができました。作り手の一人、ジャスパーさんを、デザイナーとしてではなく、ワインの作り手として招き、アストルさん主催のもと、たにたやに20人近い人たちが集まりました。そこには、近所に住むOLさんからワイン好きの常連さん、そして、デザイン関係の方。まさに、デザインの世界が、一般の人たちと交流した日になったのです。

常々思っていました。デザインは、生活を豊かに感じることができるツールであり、人々が幸せを感じながら日常が過ごせるツールでもあると。意識することではなく、無意識に自然に生活に心地よく溶け込むもの。そのために、私がたにたやでやりたいことは、訪れる人たちにデザインの良さが伝わる瞬間をたくさん作っていくこと。たにたやに来るまで知らなかった、照明や家具、壁の塗装、テーブルウェア、そしてそれを作り出しているメーカーさんや人たちのことを訪れるお客さんたちに伝えていくこと。

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2周年のイベント前に告知した、カフェ営業募集。私は、開店からい今まで、一人でたにたやを運営してきました。自分の性格上、自分の思ったようにやりたいほうなので、一人はやりやすいスタイルでした。でも、土曜のイベントを始めたり、普段の料理の準備をしていて少しづつ思うようになったのは、「仲間がほしい」ということ。自分でも意外な発案でした、いま思うと。料理の仕込みが立てこまない曜日や定休日など、日中を他の人にたにたやの場所を貸そうという計画。その募集にいたるまでにはヒントがありました。LIGHT AND DISHESにもゲストできてくれた、NOZY COFFEEの代表 能城さんが学生時代に夜営業の居酒屋さんの日中を使ってコーヒーショップをされたというエピソードがヒントに。

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告知をしてから約1ヶ月の間に、何組かの方々から連絡がありました。それぞの応募動機を読みながら思ったのは、私はどのような人にこの場を貸すべきか。
この場所が発信していることの価値。全てこの場所に関わってくれた人たちの思い。それら全部に共感してくれる人たちに貸したいということに。
いまでは、3組の人が日、月、水の日をそれぞれの方のコンセプトでカフェ営業しています。その3組の人たちみんなが、たにたやのコンセプトを深く理解してくれていて、とてもありがたく幸せなことだと思っています。ちょうど、2周年のイベントが終わった翌週からスタートしたカフェ営業。
日曜は「Cafe Primero」 20代の石川景規さん、月曜は「Small」、デザインライターのいまむられいこさん、水曜は「喫茶うまみ」の永本真一郎さんが、だいたい、11:00〜17:00または18:00ごろまで営業しています。

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たにたやを運営していて、欠かせないことのひとつに食材や飲料の仕入先さんがあります。私は、店でもお客さんと店は対等であるというポリシーでやっていますが、もちろん仕入先の方々とも同じ。調味料や野菜、ワインなどのお酒も、仕入先の方々のクオリティの高さのおかげで、支えられています。
上記、Ormialeが取り扱えられるのも酒屋さんがあってこと。
どんなことでも、上も下もなく、お互いに教え、教えられ全てが成り立っています。感謝。

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思えば、訪れるお客さんのジャンルが面白く興味深いのです。
こんなことを意識するのは素人なのかもしれませんが、私にとっては、これまで生きていて、お店たにたやをやっていなかったら絶対出会わない人たちがたくさんいるのですから。
上記のデザイナー、ジャスパーさんしかり、デザイン関係では会社員時代には敷居が高く近づけなかった人たちや、みなさん一線で活躍しているひとたち。
他では、大企業の方々や、弁護士の方、お医者さんや、会計士関連の会社の方々から、銀行・金融関連勤めの方、様々な業種の自営業の方まで。これだけの人たちと出会えるのは、この「場」をもっているからこそだと。その人たちの中では、デザインのことが大好きで普段の日常では相反する世界で過ごしているにもかかわらず、オフのときにはデザインめぐりをするのが好きな銀行員の方などは、マルニ木工さんのT2バースツールの席を指定してきてまで予約をくれます。最初は驚くも、デザインのことが伝わった瞬間を感じれるわけです。
どんなに偉いひとでも社会的地位が高いひとでも、飲食する場ではみなフラットな関係です。私は、どんなひとに対しても同じように接っすることにしています。お店とお客さんとは対等であるという考えからそのように対応するのですが、生きているなかで、心地よく過ごしたいと思うことや、センス良く過ごしたいと考えるところはみな同じなのです。

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「食」の場というのは、すごく大きなパワーを持っているということを気付かされたこの2年。新しいことを生み出したり、新しい出会いがあったり、日々暮らしていくなかで迷ったり、落ち込んだり、楽しいこと、嬉しいこと、そんな状況をひとつの空間のなかで様々な人たちと共有することができる。
私自身がお店をやる前に経験してきたこと、お店をはじめてから出会ったこと、それら全てがリンクし活かされています。人と人とが偶然にここで出会って、普通に会話している風景。カウンター越しに見ていて最近思うことがあります。たにたや自体が、生き物のように独り歩きしているんじゃないかということ(笑)
私が予測不可能なことが起きているこの場。なんかヘンですよ、、ここ。っていう感じで、もっとなにか面白いことが生まれて行ったらよいなと思うわけです。
そのためにも、私も自分の目指すことを訪れるみなさんに、伝えていこうと思います。

いま、私はAXISというデザインの雑誌のウェブ版でLightingEditというコラムを連載をしています。
光や照明の視点で、ファッション、グラフィック、建築、インテリア、プロダクトなどのデザインを取材し執筆しています。

いま起きていることのリアルを文章にするということは、私にとって難しい課題でした。LIGHT AND DISHES のレポートを翌日か翌々日にはアップしていくことがコラム連載へのパワーアップにもなっています。ゲストの人たちに料理をしながらも聞きたいことをインタビューしているのも取材の力をつけるため。
料理も、執筆も、まだまだ素人の域を出ませんが、自己流でも力を高めていけたらというモガキのようなもの。興味をもっていただけたら、そんな私のたにたや以外の活動も見ていてもらえたらうれしいです。
来年の2017年は、もっと両方の活動をアクティブにしていきたいと思っています。料理という即結果が出てしまう場と、本当に自分がずっと作りたかったモノづくりのこと。これを双方への刺激となるようにと。

いま一番強く感じて、思っていることは、「感謝」、そしてそこから生まれる「創造」
どれも、一人、自分だけの存在からは生まれない感情と行動。たにたやは、訪れる人があり、その訪れる人たちが心地よく感じられる状況を作ってくれた人たちのおかげで出来ています。そこから生まれる新しくセンスに響くことを作っていきたい。
長文にお付き合いいただきありがとうございました。

店主 : 谷田宏江 

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